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【純喫茶とパンの本】パンと喫茶店のおいしい関係

pixabay フレンチトースト

純喫茶の本は、流行りのためか、すごくたくさん出版されてますね。この店のコーヒーがウマいとか、あの店のクリームソーダはサイコーとか……。あるいは、ナポリタンはやっぱりここでしょ、とかー。

でも、忘れちゃいませんか?という感じで目に飛び込んできたのが、このムックのタイトル。

書籍データ
純喫茶とパンの本 焼きたて香る、厳選33の喫茶空間へ。枻出版社 2019年6月30日発行

喫茶店といえば軽食ですが、パンほど軽食!!といえる食べ物もないと思います。それでいて、種類が豊富。

カバー写真を飾るのが、厚切りのピザトースト。これも別に薄切りでもいいでしょう。でも喫茶店のって、厚切りが多い気がします。思うに、お店側のお客さんへの、精いっぱいのサービス精神だと感じるのです。いろいろな種類のパンが登場しますが、それらはみんな、これが表れています。

なお、本書のタイトルには「難波里奈が選んだ珠玉のパンメニューと、純喫茶の世界。」と副題がついています。難波さんは今や純喫茶を語る時、必ずと言っていいほど登場します。

あと甲斐みのりさん。この方は純喫茶専門ではないみたいですが、やはり何冊か出版されています。どこかでタバコが苦手な、でも喫茶店好きみたいな一文を読んだ気がしますが、私もタバコは苦手なので、その中で純喫茶をどう楽しむか?を興味津々で読んだ気がします。純喫茶好きのタバコ嫌いはこれは結構葛藤ものですよ。゚(゚´Д`゚)゚。

彼女たちが選ぶものも気にはなりますが、それは他の本に譲るとして、ここはムック(雑誌)の特性で、何か新しい出会いを求めたいと思います。

ピザトースト発祥の店

もはやあまりにもフツーのフードメニューと化した感のあるピザトースト。なので発祥という発想がなかったです。

でもモノに歴史あり。東京・日比谷の紅鹿舎(べにしかしゃ)が始まりといいます。名前がなんかオシャレなんで、そんなに古くないお店かと思いきや、日比谷に建ち続けて62年だそうです(失礼!)。ちなみに名前の由来は、洋食屋さんだった頃にジビエを出していたのと、華やかな色である赤を紅にして付けたのだそう。その頃にジビエって、かなりハイカラだったでしょうね。

写真を見ると色味のせいか、スクランブルエッグがのってるみたいに見えちゃうんですが、「とろけるチーズの下には、想像を超える具材のワンダーランド」と、なんか彦摩呂みたいな一文(ライターさんも大変
(。-_-。))。

想像を超えるっていうんだから、どんなものかと想像が膨らむのは当然!

その期待に応えるように、ピザトースト解剖図鑑なるページが用意されてました。「使用食材」から作り方まで、親切丁寧です。トーストにバターを塗って、ソースを塗って………想像を超える部分は、サラミ・マッシュルーム・ピーマン、これがたっぷり。

でもふと思ったんです、こんだけ教えてくれれば、うちで作れんじゃん!ーーーちっちっちっ👆そうはいかない。

「たっぷり乗せられたチーズは、中の具材をふんわりと蒸し焼きにするための技。また、蓋がないオリジナルのオーブンは、次の注文が入っても温度を変えることなく追加できるようにと工夫されたもの」。このオーブンは特注なのでしょうか。家でそんなのがあったら、お店開けます。

華月自慢のデザートの脇で

渋い店名のこのお店の売りは「チョコレートシフォンケーキ」だそうです。昭和8年に和菓子屋として創業した喫茶店で、今やケーキです。

しかし、パンです。ホットドッグがいいらしい。見た目はまるでド〇ールそのものなんですが、問題はソーセージのにあった!

隠れたそこにはケチャップと、フライドオニオン。そう、ここのはソーセージの上に乗ってないんです。そして丸ごと少しフライパンで焼く。このひと手間がいいんでしょう。定番のマスタードはやはり、ソーセージには乗せないで、お皿の脇にちょこんと。そこはかとなく上品さが漂います(* ´ ▽ ` *)

やはりお客さんを呼び込むための工夫が感じられます。粋な場所、日本橋小伝馬町にアリですね。

”背筋が伸びる”カレー

珈琲伴茶夢(ばんちゃむ)はカレー。もちろんパン入りです。本書のタイトルを見て食パンとかサンドウィッチとか、“そのまま”の形のメニューしか思い浮かばなかった、貧弱な想像力の私だったので、カレーが登場した時は不意を突かれたようでした。なるほど、それもありねU_U

その名もパンカレーという「ハイブリッド」なメニューはもちろんおいしそうですが、ちょっと脱線して注目したのが、上皇さまが来店したことがあるということ!

パンカレーではなく、アメリカンコーヒーを飲まれたのだとか。尊敬してやまない方が来店したといえば、刮目します!O.O

1977年創業ということなので、きっとその辺りだったのでしょう。お忍びで来れた時だったんでしょうね……。ちなみに変わった店名の由来は、「アラビア人が珈琲豆をバンと呼び、その飲み物をバンチャムと言ったことから」。コーヒーはアラビア発祥ともいわれるので、正当な店名ともいえるかも(もう1つの人気メニュー焼きサンドもおススメ)。

喫茶店てどんなとこ?

パン以外にももちろん、様々な記事がありますが、P54に色々な人の「喫茶店てどんな場所?」があります。

ここでのキーワードは「日常」です。でも2つの正反対の意味があるようで、非日常へ抜け出す場所と、日常の延長線上にある場所。これは人それぞれなので面白いです。

菅原慎一さんは「"ちょっと"贅沢な日常」と言い、都築響一さんは「身近すぎて覚えていないくらいの店。それが、いい喫茶店の条件だよね」と言います。その店に”どのくらい行っているか”という距離感もあるかもしれません、単純に。

いづれにしても自分をじっくり確認できる場所。そんなことができる数少ない場所が喫茶店なのでしょう。

”純喫茶ブーム”にひとこと

せっかく都築さんに登場してもらったので、もう少しご意見を伺いたいと思います。私の蔵書にも彼の本はあります。ある世界に精通している人なので、言動は注目に値します。

冒頭から純喫茶のブームに違和感を持っているとおっしゃる。別に水を差すつもりで言っているのではないと思います。ただ、私もそうですが、“みんなが右を見ている中で、左を見ている人もいて当然”だと思っています。そうでないと、なんか危うい。自分は左を見てる人間でありたいと思います。

都築さんに興味を覚えるのはそういうところなんですが、彼はタバコを吸うか知らないけど、「禁煙や分煙されていない店が多いのは"居心地が良い"とはいえない」と言います。

先にも書いたけど、タバコ嫌いで純喫茶好きな人の最大の悩みは、ここにあります。私も我慢してお店にいたこともあるけど、それって、本当に居心地がいい事になるのか?

あと「行列までして入るところか?」そうそう!これは喫茶店に限らず“行列のできる店”に疑問がありました。性格的な事もあるけど、並ぶ時間がもったいない!と思います。だったらそこそこでもゆったり過ごせる店の方がいい。と思います、断然。

都築さんのいい喫茶店は老舗チェーン店のルノアール。東京にありながら、とにかくゆったりしている。

私が思うに、超個性的な純喫茶はどうも………。という人でも、純でありながらチェーン店の”気楽さ”も併せ持っているこの店は、喫茶店は気になっているけど、いまだデビューしていない人向きでもあるでしょう。

pixabay モーニング

ワクサカソウヘイさんの小気味よさ

ワクサカさん。初めて読みました。真面目なのか、ふざけてるのか。よく分からない文体で面白いです。

「コーヒーが飲めない私の『喫茶店』考」というタイトルのエッセイは、タバコ嫌いの人の喫茶店愛と同じく、悩ましい矛盾を提示しています。

でも強制的にやってくる煙と違って、飲み物だから(香りはあるけど)見たくなきゃそれでいいもの。だからワクサカさんは意外なものに目を留めます。

まぁ、凄いコーヒー好きだけじゃなく、喫茶店へ行けば暗示にかかったように「とりあえず、コーヒー」になるでしょう。でも苦手な人は?

ワクサカさんはホットミルクへ切り込んで行きます(ダークホース的という)。某名古屋のチェーン店へ行った時にうっすら感じたのですが、「ミルク頼む人、いるのかな?」と思いつつ、その場の居心地よさに流されて、頭の片隅へ追いやられたのですが、ワクサカさんは見逃さない。

「おそらく、喫茶店でホットミルクを注文したことのある人は、少数であると思われる」。そうそう、そこのあなたはこの飲み物に「試されている」。とたんに憩いの場に緊張感が漂う。

「異常なまでにプリミティブかつシンプルな飲み物」と結論付ける。他の飲み物は「飲まされる」もの、受動的だが、ホットミルクは「飲みにいく」、能動的なものだ。今までの喫茶店での経験を総動員して、この飲み物と対峙しなくてはならない。

今までホットミルクについて、ここまで考察した人がいるだろうか?これで喫茶店でホットミルクを頼む人が増えるだろう?(=∀=)

あと喫茶店といえば忘れてならないクリームソーダがあるけど、「時間をかけてやっとグラスの中を空にしたかと思いきや、真っ赤なサクランボが『まだ終わりじゃないぜ』とばかりに底に佇んでいたりするとところも、実に憎めない」は名文。なぜかハードボイルドなんですね。

小倉トースト紀行

やはり小倉は外せないでしょう。そして名古屋。

一口に言っても、そこは種類が豊富です。発祥の地として有名な喫茶まつば珈琲家ロビンCOFFEEボンボンなどのしっとり系のあん。かたやコンパルはつぶが大きく水気たっぷり。その中でKAKOBUCYO COFEEはちょっと豪華です。

丸い形のカイザートーストにしっとりつぶあんと生クリーム。ソフトクリームも添えられてこれをつけても可。ちなみにこのセット名は「午後のモーニングセット」………。

この特集を執筆したライターさんによれば「名古屋のパンはうまい」。納得です。やっぱり家で作るのと違います。

若い世代の純喫茶

先ほど登場した菅原さんと巽啓伍さんの対談が最後を飾ります。昔拠点にしてた下北沢のお店についてだけど、この街も随分変わったと彼らの口からも聞きます。ジャズ喫茶の名店もすでになく、純喫茶なんてもうあんまりないんじゃないかと思ってました。

でも変わっていくのは下北ばかりじゃなく、どの街も必然だし、それは最近に限った事じゃないと言います。

その中で、巽さんは喫茶店って「来る人を選ばない」ところと言います。菅原さんは浪人生だった頃の喫茶店通いを語ってくれています。浪人生は、学生でもなく不安定な存在。そんな人間を喫茶店は受け入れてくれる。

純喫茶に行きたい人は、どこかに不安定さを抱えてるんじゃないかと思いました。自分もそうだし。

いや、もっと言えば人間はみなそう。どこかに(特に都会に)安心できるつかの間の空間を得たいんじゃないか。というとドリンクやフードは単なるアイテムになっちゃいそう(ノ_<)

これ以上言うと泥沼なので、もうひとつ純喫茶を語ると必ず出てくる歴史について。巽さんは「歴史があるから格式が高いことにはならない」といいます。若い世代にとって、知らない歴史にあまり意味を感じないんでしょうか。

「日常生活の延長線上にある」。いまを生きる人の喫茶店です。



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Last Modified : 2020-02-14

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